今回はそのメモ.
日時: 2011年3月3日(木)14:00 〜 17:00
場所: 慶應義塾大学 新川崎(K2)タウンキャンパス
■ 感想
接触した弾力,反発や硬さなどが分かるのは面白いですね.
遠隔先での小さな接触でも,それを増幅して伝えたりできるのも幅広い応用が聞くと思いました.特に力を変形するというのは,日常では意識しないので「気づいたら当たり前」という製品のきっかけが多くありそう.人間の手首の回転は限界があるけど,機械にはそれはないわけですし,いろんな動きが実現できそうです.
■ 概要
「実世界ハプティクスの展望」 講 師:大西公平 教授
触感"再現技術から次世代の産業創成へ 講 師:大西公平 教授
詳細はこちら.
http://www.k2.keio.ac.jp/seminar_schedule/seminar-ohnishi.html
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このような観点から、これまで私たちの研究室では「実世界ハプティクス(※1)」技術に着目し、従来のメカトロニクスやロボット技術では実現できなかった“柔らかい動作”を可能にし、更に“人間動作の模倣・再現”までをも実現する新しいシーズ技術を築いてきました。視覚や聴覚に続く第三の感覚である力触覚を情報として通信し、動作再現し視覚化することが可能なこの実世界ハプティクス技術を核にして新しい産業が将来に向けて次々に創成・展開されて行くものと注目されます。
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■第1部 「実世界ハプティクスの展望」 講 師:大西公平 教授
ハプティクス…人間の触覚を工学的に伝達・再現・可視化して、社会に活かす学問・技術
以前は仮想接触という面が強かったので,区別するために「実世界ハプティクス」と呼んでいる.
実世界ハプティクス: 実世界触覚学
人間が触った実際の力覚・触覚を伝送,保存,再現し,利用していくための学問分野.
遠隔医療などでの利用が想定され,研究が行われている.
触覚表示,産業の変革,職人の技術を記録しロボットへのコピーなど,今後は,人間の関わる部分が多いところ = 手間ひまかかるところへの活用の広がりが見込まれる.つまり,ボトルネックの解決に繋がる.
■ 現状
ロボット市場は拡大にはなっていない.数年前の将来予測値とはかけ離れて,開発費用は低下している.
なぜ拡がらないのか?
力制御がなく,移動制御のみなのが現在。実用的にならない。いまはばね仕込んでつかんでたりといった仕組み。
今のロボットは硬い。そのため、法律的にも制限があったりするらしい(?)。
■ バイラテラル制御
ハプティクスの基礎技術.
1952年の論文ですでに,"力"制御がないとうまくいかないという論文がある.ビーカーをつかむ実験を行っている動画の紹介.でも実用的ではなかった.
固いものだと振動してしまう.
■ 研究内容の特徴
力加減が記録・反映できること.
感度はスケーリング自由。
先端の振動制御が重要。
先端部にセンサーもいらない.
力を伝えることができる研究室は慶應のみと思われる.論文読んでもまだ見当たらないとのこと.
■ 運動の原理
「つまむ」と「うごかす」という動作.
順変換と逆変換の仕組みで再現できる.具体的には,(図がないと説明が難しい..)
甲と乙の動きが右左の組み合わせか、一方向だけかで判断できる。
どんな運動も力制御と位置制御、そして変換で表せる。
剛性(硬さ)が,無限大だと理想的位置制御,0だと理想的力制御ができる.
マスターとスレーブでお互いの情報(移動状況)を共有できる.
双方向でデータを投げてるけど、交互になっても一パケットのズレなので問題ない。
光ってるところがセンサー。距離をはかってる。0.1ミクロンの精度。一秒間に1000回の読み取り?
一秒間にどのくらい変更できるか、周波数領域が大事。
■ 応用
この研究によって,加齢による触感の衰えを実感したらしい.人は年を重ねてくると微妙な違いが分からないらしい.
つまり,年齢による力の衰えが判定できたり、かけ過ぎの力が警告できたりする。
モーションコピーシステム
巧みの技術をデータで保存して,ロボットで再現する.
個人的に,遠くからピアノコンサートとかにもつかえるかなぁ。でもプロは体に接触するものは嫌がりそう.なんてことを思ってました.
体内血管上での細かい作業をするときなど.ちょっと触れただけでも分かったほうが良い.
同じ原理で,感度を弱めることも可能
大きな工事現場などで起きる大きな振動などは直接伝えるよりかは微弱にして接触だけわかれば良い.要は,力の変形が可能になる.
■ 先生の言葉
(すみません,うろ覚えなので多少の違いはあります.)
・触覚は忘れられやすい.また,意識していないときは相当鈍い.以下に医者の集中力を高められるか.
・現象をみて,解析して,原理を考えることが大事.
・基本技術をしっかり押さえておくことが大事.そうすれば先行したあとそのまま追随を許さない.
『2番じゃダメなんですか』なんて論外.
・「科学には不可能の文字はあるが,工学にはない」
・触感は表現が非常に難しい.新聞の記事をよんで実感した.体感してもらわないと伝わらない.
・今は,環境(Green)か,生命(Life)の予算は取れる.ただ,まだ儲かる段階ではない.
・一人ひとりに違う方法を提供できるような技術が今後求められる.iPhoneなどのように人によって使い方を選べる方式とか.
東工大の手術支援ロボットは,空気圧を利用した力の伝達だったと思う.こちらは物の移動距離を測定して行う仕組みと理解.