2011年09月24日

[いま,目の前で起きていることの意味について]読了





「行動する33の知性」とタイトルにもあるように,様々な人の考え方が載せられており,それぞれのテーマに対してジャック・アタリさんのコメントが数ページで描かれています.世界中で起きている多くの問題点について,ざっと現状そして未来を考えるよいきっかけになると思う.

以下の目次をみるだけでも,テーマの幅広さが分かる.

 I部 世界
  1章 民主主義
  2章 国際安全保障の問題点
  3章 暴力のない世界は考えられるか
  4章 中東の平和は世界平和につながるか
  5章 エイズ−求められる国際的連帯
  6章 気候をめぐる諸問題
 II部 経済と政治
  7章 政治家の役割
  8章 金(マネー)
  9章 保険の未来
  10章 法の未来
 III部 科学とテクノロジー
  11章 科学の将来をめぐる断想
  12章 生命の未来
  13章 科学−変わりつつある人格の概念
 IV部 文化
  14章 フランスの才能は果たして衰退しているのか
  15章 変化する音楽界
  16章 文学および演劇、芸術それとも娯楽?
  17章 現代社会における無償(フリー)の新たな位置づけ
 V部 社会
  18章 女性の地位は世界中で低下しているのか?
  19章 宗教は我々の行く末を規定するか?
  20章 激動する家族と恋愛関係
  21章 労働−新たな慣行、それとも新たな不安定さ?
  22章 麻薬−気晴らしの極端なかたち?
  23章 時間
ジャック・アタリさんはフランスの方なので,フランス人から見た視点の一つだと思う.その視点からみた世界の状況,日本の見方が結構新鮮.

実は,予想と違った(もっと,気軽な文章・物語だと思ったら,固く,そして社会的な文だった)内容だったけど,読んでよかったと思える本でした.


以下,印象に残った文章(本当にたくさんあったので)からごく一部を転載.


■第一部 世界

■1章 民主主義
民主主義が多数派による独裁なら,私に言わせればそれは民主主義的ではありません.統治しながらも独裁的にならない多数派を持つことにこそ難しさがあるのです.民主主義の主要な課題は,少数派の権利をいかに認めるかにあります.

<略>しかし一般意志の継続的存在は,それが今日のように世論調査の形で現れ,政治家が全体の利益でなく,支持率の上昇を考えて政策を決めるとき,かえって弊害をもたらします.世論調査を過度に気にする代表者は,代表者としての仕事をしなくなり,不確実な情報しか発信しない断定的論調の前にひれ伏してしまうので,世論調査への依存は民主主義をゆがめるのです.




ここでは世論=国民の多数意見的な意味で用いられていると思うけど,さらにいえば,昔から続いているマスメディアの意見であって,国民の意見とはいいがたいとインターネットが普及して様々な人々の意見を自由に目にできるようになってからは感じる.
そして,「少数派の意見をいかに認めるか」.これが,社会の公平性をどのように持続するかに結びつくのだと思う.




■2章 国際安全保障の問題点
OSCEが考える意味での最も適切な措置は,緊張の要因を減らし,持続的に働きかけることである.そのためには,ヘルシンキ宣言の意義に沿った望ましい統治と,具体性のある民主主義の構築につながるような安定した国家構造を促進しなくてはならない.

世界史が示すところでは,国際機関はきまって戦後に誕生している.赤十字が生まれたのはクリミア戦争の後である.国際連盟は第一次世界大戦の後創設され,...<後略>



この章を読んで,国際機関の誕生した背景を考えると,人間は前進しているのかなと期待したいけど,一方でお金という新たな価値に引きづられてしまい,結局変わっていないのかなと失望したり.



■3章 暴力のない世界は考えられるか
私はこれまでずっと,暴力が差異からではなく同質性から生じると考えてきました.現代では人種間の差異が少なければ少ないほど,身の回りに人種差別が広がる傾向があります.



排他主義というか,意識しないと,同じ色になろうとしてしまうかもしれない.この特性は日本だけではないのだな.



■6章 気候をめぐる諸問題
京都議定書がもたらす経済的利益は大きいものです.<中略>京都議定書の2008-2012年版の交渉ではそれが焦点になります.この交渉の行方が事を左右するのです.

たとえフランスで原子力を利用していても,それは60億の地球市民全体の解決策にはなりえません.有効な処理方法の見つからない放射性廃棄物の問題を別にしても,核拡散のおそれが厳然として存在するからです.イランや北朝鮮の動きが象徴するとおりです.<中略>
核を土台とするエネルギー政策には廃棄物の処理場少なくとも100年間安定が続くことが必要ですが,民主主義はそれほど頑強ではありません.




いつも思うけど,京都議定書は,結構日本という国をPRするのに有効だったんだと思う.海外での評価は高いのではと.なぜこれをもっと利用してリーダーシップを取らないのだろう.小泉さん以降の自民党はほんとになにやってたの.
原子力は2面性を極端に強く持っていると思う.このせいで身動きがとれなくなったりするし,魅力が大きすぎて麻薬に近い.



■第2部 経済と政治


■9章 保険の未来
人間はかつて,近代社会には伝統的社会よりもリスクを受け入れる余地があると考えていました.メディアの力によって教育,文化,知識レベルが向上し,近代社会はより容易にリスクに備えることができるとされていたのです.<中略>
ところが,今起きているのはまさに逆の現象であり,社会学者や経済学者もこぞってその逆説性を認めています.現代の社会はいわば"リスク恐怖症"にかかっています.

民主主義こそが,保険の必要性を増大させると言えるでしょう.全体主義体制の社会では保険を掛ける需要が減ります.つまり,民主主義は,保険会社の"勧誘員"なのです.<中略>民主主義の深度を示す指標と,国民一人あたりの保険料額を比べれば,そこには明らかな相関が見られます.国民一人あたりの保険料が世界で一番高いのはスイスです.スイスは一般に,特にはその投票方式によって 世界で最も参加型民主主義が発達した国とされています.




「民主主義は保険会社の勧誘員」.面白い表現だけど,納得行くような認めたくないような.(笑)



■第3部 科学とテクノロジー

■11章 科学の将来をめぐる断想
20世紀末以降に生じてきた新たな事態は,一部の研究分野の行き詰まりである.<中略>それでも,次の世代にこれらの学問を教え,研究を継続しなくてはならない.いくつもの研究分野が終焉を迎えたというのは歴史上初めての出来事である.こうした分野の知を一体誰が持ち続けるのか?これらを教えられるのは誰か?

望むと望まざるとにかかわらず,我々は"国際的な"状況の中にいる.いまでは,最も出来の良い学生はこういう.「先生のご指導の下で博士論文を書きますが,そのあとは講師としてアメリカにわたります.分かって頂けますね.ここでもらえる給料では家族を養えないのです.」



教えられる人がいなくなるというのは,結構重い現実だとこの本を読んで感じさせられました.今の技術を使い,映像・音声で残し,書籍で勉強する.どれだけの品質を保てるのか.


この本には,,なんどか,「人工子宮」という言葉が出てきます.
第5部の『社会』.今後の未来を設計する上で考えなければいけないし,知って置かなければいけないことがたくさんある.
世の中専門家だらけだな.



ラベル:Book peace
posted by maplewine at 08:00| Comment(0) | TrackBack(0) | book | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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