なんでだろうな...
今回は,読み終えたばかりの新作「職業は武装解除」の紹介です.
これ,タイトルも面白いなぁと思いませんか.そんな職業あるの?と.
でも,あるんです.
僕が「DDR」という言葉の存在を知ったのは,2009年になったばかりの頃だったと思う.DDRとは,Disarmament, Demobilization, Reintegration の略で,正直どの単語も馴染みがありませんでしたが,日本語で説明すると,「武装解除・動員解除・社会復帰」となります.
軍隊から,武器を回収し,次に兵隊を回収し,その兵隊たち・軍幹部を社会復帰させること.
この言葉を初めて耳にした時は,途上国の生活,とくに紛争の絶えない地域において,僕は命の確保に重点を置き,特に若者に対する医療及び教育のケアが大切だと考えていた.そんな中で,日常の安定を図るために,軍隊に対して働きかける活動があることを知り,そういった方法で平和を構築することができることに衝撃を受けました.とても効果的で,かつ,日本のような立場でも活躍することが可能な活動で,むしろ適任国だと思います.
さて,前置きが長くなりましたが本の紹介.
瀬谷さんのことはDDRの用語を知ったきっかけであり,この頃から,ずっと注目してて,雑誌などに載ってることをしれば,購入して読んだりしていたし,以前,U理論のイベントに参加したときにもストーリーテラーとして参加されてたので,色々な活動に関するお話や,彼女の考え方をある程度は知っていました.
(U理論のイベント参加報告はまた,近いうちに書きたいと思います.)
瀬谷さん本人が述べていたのですが,この書籍で,彼女自身が第3者に対して,初めて述べることが多く書かれていて,それぞれが興味深いエピソードで楽しめます.彼女が武装解除・DDR を行なっていく過程でどのような点を注視し,力を注ぎ,また現在も続く問題にも言及されていて,しかも専門的な用語を多く用いるのではなく読みやすい.この活動を理解するよい助けになる本だと思います.
社会貢献・国際協力というものに興味が有る人はもちろん,まったく知らない人達にも読んでほしい一冊.今後の日本人が目指す方向などについても,いまの彼女の立場から述べられているのでそのような意見に耳をかたむけるのにも価値があると思う.
以下,本文から少し引用させて頂きます.
きっかけ:
「でも,高校3年生の時に,ルワンダの内線の様子が撮影された写真を見て,為す術もなく命を落としていく人々の様子と自分を比べ,自分には「自由に行動をする権利」があるということに気がついた.人生を自分の手で変えられる,その権利は,世界の誰もが持っているものではない.」
「自由」多くの人が頭ではわかっているけど,それを確信を持って理解したこのきっかけ.この本を読んでいると,彼女自身の大きな選択をすらりと書いているところ(実際は違うのかもしれませんが),その決断力に心が揺さぶられます.
例えば,以下の決断.
2章:武装解除の現場に立って
どうやらUNAMSILの事務所として使っているホテルの一階部分の客室15部屋だけは今でも一般客が宿泊できるらしい.これなら宿泊客としてホテルには入れる.無謀かもしれないが,そこから突破口がみえるかもしれない.
でも価格は一泊二万円.航空券も買わなければいけないことを考えると完全に予算オーバー.日本に帰ってからの生活費がゼロになる.
一晩悩み,結局そこのホテルに予約を入れた.こうなったらかけだ.未来の自分にとって,これが負債となるか,投資となるかは自分次第だ.
この決断が正直すごいと思いました.こういうここぞというときに前へ進んできたからこそ,いまの瀬谷さんの道があるんだろうな.少しでも,彼女の望む世界に近づくといいなと思います.そして,自分にできることを改めて考えたりもする.
「無秩序な政権が横行した時代も国のために戦った戦士たちだった.『銃を枕によく野宿したよ.相棒みたいなもんさ』自動小銃を片手に彼らは無邪気に笑った.そして,武装解除される時,涙を浮かべて私に言った.
『本当はずっと兵士でいたいよ.国を守るために戦ってきたことは,俺の誇りなんだ.』」
正直,言葉がでませんでした.それぞれの正義,武器を手放してくれた人たちも守ってあげなければいけない.そう感じざるを得ない兵士の誇り.
「組織名や役職は,交渉の時などに相手に与える印象を多少は左右する.<中略>でも,所属や肩書きがないと自分が何者かわからなかったり,自信が持てないのは,自分自身が肩書きに負けているということだ.転職しても,「元◯◯職員」だったり,過去の栄光を持ちだしたりしないと自分の自信が保てない場合は,過去の自分に負けているのだと思う.」
最近の世界情勢や日本の情勢は,先が読めない不安感に溢れているように思えるかもしれない.でも,過去に世界が混沌としていない時代なんて果たしてあったのだろうかと思う.
自分もこのように考えているが,そう言い切れるだけの行動を実行していないと思っている.その中で瀬谷さんのこの言葉たちに改めて勇気を頂きました.
「それはない.パキスタン軍では,ヒゲを剃る場合は上官の許可が必要なんだ.軍の証明写真と外見が違わないようにね.」
「へぇ……」
人生において二度と活用しそうにない豆知識をゲット.
こういう楽しくなるような情報もあり,全体としてとても読みやすい本になっています.
ぜひ多くの方に手にとって読んでみてほしいと思います.