2011年12月22日

精神病院を捨てたイタリアと大熊一夫氏

9/12up:U理論ストーリーテリング –Uで紐解く、開拓者の軌跡ゲスト:ジャーナリスト 大熊一夫氏 @10/20

http://inlakech.worldchange.jp/?p=168

上記イベントに参加してきました.

私自身,U理論は,まだ学び中の身でありますが,定期的に行われる会では以下のような説明がされています.

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「U理論の構造については非常に良く理解できたが、実際にU理論でいうUの谷を下りきった時の感覚がどういうものか知りたい」
この声に応えるために、高い創造性を発揮しているゲストとの生の対話を通じて、U理論におけるUの谷を下り、上がるという一連のプロセスを具体的に感じて頂くことが本会の目的の一つです。
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大熊さんは,朝日新聞新聞記者から週刊朝日副編集長→アエラスタッフライターを経て,無所属のジャーナリストとして活動している方です.私自身は,申し訳ないのですが,大熊さんについて全く知識がなく,個人的に,この方のジャーナリストとしての活動に,その意思の強さに興味があって参加することを決めました.



大熊さんのプロフィールは,以下のように紹介されています.
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東京大学教養学部教養学科『科学史・科学哲学』を卒業して朝日新聞記者になる。
1970年、アルコール依存症を装って精神病院に潜入入院し、『ルポ精神病棟』を朝日新聞社会面に連載。鉄格子の内側で日常的に行われていた入院者虐待を白日のもとにさらし、日本の精神医療改革に一石を投じる.
以来業界を代表するジャーナリストとして、今でも精力的に著作啓蒙活動を続けられ、多くの人の人生に影響を与えてきた方です。

2008年には、日本より30年進んだ精神病治療への取り組みが行われていると言われているイタリアでも、長年の功績が評価され、第一回「フランコ・バザリア賞」を受賞されています。(※)

※ バザリアは半世紀前に「自由こそ治療だ」と「精神病院は治療に不適切」と主張したイタリアの精神科医。イタリアでは、1978年に世界初の精神科病院廃絶法(通称バザリア法)を成立させ、精神病院を置かないという政策が国として行われています。
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参加してみて,この方の感覚の違いを感じ,とても興味深い時間を過ごすことが出来ました.


「病気」と言われる物理的な症状は,多くの人にとって,今までの経験や知人の様子から理解しやすいかと思います.しかし,心理的な症状は,外傷となっては見えないため,本人以外には理解されづらいという問題を抱えています.かつ,この病気は「完治」と判断する基準も客観的な目安はまだ一般的ではありません.

その中で,臭いものに蓋をするようなやり方ではなく,どのような対応が,病気を抱える人々にとっても,回りにいる人々にとっても過ごしやすい社会を作りのか,一つの事例がここにあると感じます.



簡単ではありますが,彼の発言を少しピックアップしたいと思います.

・「自分の知らないことに出会って,これを世の中にどうにか知らしめようと思う時,新聞記者としての醍醐味」

・(社会人になって)自分を「落ちこぼれ」と自覚

・精神病棟内でのリアルな様子を説明.



もともとは,自分の意志ではなく,その時の状況やなんとなく(苦手科目のない学部に行きたいとか)で大学・職業を選択され,自分の性格にあっていなかったが,社会部で交通事故の記事などをかくためには,図々しくなる必要があったり,たまたま(?),(社会的な問題を自分の視点で体験するために?この現象は何だろうと疑問を持ち,) 新宿でフーテンをして,そこでこれは自分に合ってると気づく.

それをきっかけに精神病棟への報道にたどり着きました.(ここまででも十分面白い話が満載でした.)



精神病院の取材の時も,本当に,病棟には行きたくなくて,それでも自分からやりますと言っちゃった手前困ってて,あるとき,ようやく決断して,えいやっとアルコールを思いっきり飲んでアル中患者として入院した.
『2週間くらいで出たが,今思えば半年くらいいたかった』とのこと..ただ,お金がなかった.
そこでの生活は以下のような感じ.

・偽名で入って,現金払い.
・不潔部屋.臭いが凄まじい.
・一番驚いたのは,トイレに扉がないこと
・回診は,壁一列で正座,みんな頭擦りつけて退院を懇願.
・屈辱的な事だらけ



30年前ですが,ぞっとする状況です.この時代は,新聞記者も精神病のことは分からなかった.というコメントもあった気がします.多くの人が,この病気について誤解どころか,認知もしていなかった段階.


短い時間の中で,大熊さんの考え方を聞いてて,色々考えることがありました.


『イタリアが精神病院をなくしたことをきき,専門医をつれて,通訳を雇い(この通訳はダメダメだったと現地で知る),85年にイタリアで精神病院をなくす本が出て,本当になくなったのは98年.実際になくなった街を目の辺りにして嬉しくなった.』


彼自身は言わなかったけど,彼は心の底から,精神病院がなくなる(正確には,精神病を患っている人でも共存できる社会づくりができている)ことを願っているんだろうなと感じる言葉でした.


その後,大熊さんは引退して,隠居していた頃,イタリア人の知り合いから手紙が来て,「イタリアは変わった」と.困ったのは,精神病院と社会との関係の答えがなかった.解決法がなかったこと.(この辺,メモが汚くて曖昧なのです.ごめんなさい.)

(医療を?)市場原理に委ねた日本に絶望.アメリカだってやってない.本を出版しようとしたが,朝日新聞に拒絶され,本が出せなくて困った.2009年10月にようやく本を出すことができて"救われた"

こういうことも言われてました.

日本のジャーナリストで専門的にテーマを見つけてやってる人はどのくらいいるのか.
日本の新聞社はその点はダメ.専門家を作りたがらない.結果つまんない記事になる.
新聞の衰退につながる
日本の新聞社は自前の記者でやろうとする.アメリカはフリーランスを使う.




自分は新聞記者だから最初は疑ってかかる.こんなことやっていいのか.大改革が出来るのかと.


多くの方から「なぜそんな大変なことをするのか?」という質問が出ていました.大熊さんは見た目はものすごく若く,健康的に見えますが,もう70歳こえてます.



たまたま,この会に参加する前に読んだ本かなにかで,人は自分のために何かをするより,誰かのために行動したほうが仕事の集中度が高まるというような文章がありました.この方は,最後まで,周りの状況に流されて選択してきたような人生というようなことを言ってましたが,私は,少なくとも,自分の欲のために動いた選択はしていないと感じます.きっとその誰かのために隠れた努力を多くしているんだろうなと勝手ながら想像していました.


彼は,こう言ってました.

『このままじゃ引き下がれない.知ってしまった責任がある.』



この方の本を読んでみたいと思います.







1月のU理論のゲストは柳澤大輔さんです.カヤックという会社は面白い事を追求する会社で今後の追求にもとても興味があり,参加したい気持ちもありますが,他の事情もあり悩んでいるところです.
posted by maplewine at 00:12| Comment(0) | TrackBack(0) | Peace | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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